地政学的・経済的状況が不透明な中、上半期は横ばいで推移
生産量の95%を世界約200市場へ輸出するスイス時計産業は、業界の動向に影響を及ぼす数多くの要因に直面しました。地政学的、マクロ経済的、あるいは通商上の制約が、業界の業績に大きな影響を及ぼしました。2026年上半期は、とりわけ米国市場において、追加関税を巡る動きや、2025年第2四半期の関税導入以降に生じた大きなベース効果を背景に、激しい変動が見られました。また、スイス時計輸出の10%を占め、それまで世界で最も高い成長が期待されていた中東の状況も、2月末以降続く紛争により悪化しました。一方、中華圏では、中国本土と香港特別行政区を合わせた市場が過去2年間で30%縮小した後、2026年上半期には安定化の兆しが見られました。
また、業界は複数の経済的な逆風にも直面しました。すでに高水準にあったスイスフランはさらに上昇を続け、海外市場における時計価格を押し上げるとともに、輸出企業の利益率を圧迫しました。さらに、米ドルおよび米ドルに連動するその他の通貨が2025年初頭以降大幅に下落し、米ドルはこれまでにない低水準となったことで、業界最大の輸出市場である米国向け事業の収益環境は一段と厳しさを増しました。加えて、一部の製品では、上半期に金価格が過去最高水準を記録したことが、販売価格と生産コストの双方に大きな影響を及ぼしました。
こうした状況に加え、販売業者が補充発注を慎重に進めたこともあり、スイス国内の生産は引き続き厳しい状況に置かれました。一部のサプライヤーでは、RHT(労働時間短縮に伴う補償制度)の利用期限が近づいている一方で、すでに人員削減に踏み切った企業もあります。全体として、雇用は引き続き緩やかに減少しました。
こうした状況にもかかわらず、スイス時計輸出はおおむね底堅く推移し、減少幅はわずかにとどまりました。輸出額は128億スイスフランで、2025年上半期比で0.7%減少しました。米国や英国をはじめとする主要市場では、スイス時計に対する需要は引き続き堅調でした。また、メキシコやインドなど成長著しい市場では力強い伸びを記録しました。
2026年通期は、全体として2025年と比較しておおむね横ばいで推移する見込みです。しかし、中東情勢や、米国政府が今後スイスに課す可能性のある関税を巡る動向についても、不確実性は依然として極めて高い状況にあります。
スイス時計輸出の詳細
腕時計の輸出額は上半期末時点で122億スイスフランとなり、わずかに減少しました(-0.6%)が、輸出本数は増加しました。年初からの6か月間に海外へ出荷された腕時計は700万本を超え、2025年上半期と比べて16万2,000本の増加(+2.3%)となりました。
輸出本数の伸びを主にけん引したのは、輸出価格500スイスフラン未満の機械式時計で、23.8%増加しました。一方、金額ベースでは、500~3,000スイスフランの価格帯が減少(-5.7%)したことが全体の業績に特に響きました。
貴金属腕時計の輸出額は6.5%後退した一方、バイメタル製品は20.0%の増加を記録しました。こうした需要の移行は、特に素材価格の影響によるものです。「その他の金属」カテゴリーも大幅な増加(+14.4%)を記録しましたが、スチール製品は減少しました(-6.5%)。
対米時計輸出は、2025年上半期比で14.8%減少しました。これは、追加関税の発表を受けて2025年4月に150%の増加を記録するなど、前年の比較基準が極めて高かったことによるものです。ただし、2年間で見ると2024年比で2.6%増加しており、同市場の底堅さを裏付けています。
アジアでは、香港の増加(+3.3%)が中国本土の減少(-5.0%)をほぼ相殺し、地域全体でおおむね横ばい推移となりました。とはいえ、中国本土で続く落ち込みは、2024年末時点では業界第2位の輸出先でありながら、現在は第6位まで後退した同市場の見通しをさらに不安定なものにしています。その他のアジア市場では、日本は小幅に減少(-1.6%)した一方、シンガポールは2.2%、韓国は6.5%の増加を見せました。
中東の動向は予想ほど大きな落ち込みとはならず、上半期の地域全体では2.0%の減少にとどまりました。また、アラブ首長国連邦は1.6%増加しました。
欧州では、フランスが63.4%の大幅な伸びを記録しましたが、これは市場の実際の動向を反映したものではなく、欧州内の他地域へ再輸出される製品の物流経路に変更があったことによるものです。英国(+5.8%)は、スイス時計輸出を支える堅固な市場となりました。一方、景気低迷が続くドイツは、引き続き後退しました(-10.5%)。
特に高い伸びを示したのは、ここ数年力強い成長が続くメキシコ(+14.9%)と、それに続くインド(+31.5%)です。インドは第15位の輸出先となり、業界にとって引き続き最も有望な長期的成長市場と見なされています。
July 21, 2026

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