輸出額では増加したものの、輸出本数では減少
複雑で変化する環境の中、スイス時計産業は、1年前の予測にたがわず、2018年に達成されていた高いレベルを上回る輸出額を記録しました。経済的、商業的、政治的、また社会的にも好ましくない状況にある中、スイス時計は高級市場全般での継続的な需要の恩恵を受けました。しかし同時に、高額なカテゴリーもエントリーのカテゴリーも、競争の激化に直面しなければなりませんでした。特に後者のカテゴリーでは販売本数が大幅に減少しました。全体的な概況は均一なものではなく、ブランド、市場、または製品カテゴリーによって大きく異なるものとなりました。
最終的に、2019年のスイス時計の総輸出額は217億スイスフランで、2018年と比較して2.4%の増加となりました。下半期(+3.2%)は、上半期(+1.5%)の2倍の成長を記録しましたが、第4四半期(+1.1%)には、香港での大幅な落ち込みにより、成長が鈍化しました。
全般的な状況は複雑なままであり、時計ブランドにはそうした状況に対応するための努力が求められるでしょう。スイスフラン高、香港の停滞、米国の大統領選挙、ロシアと特にトルコでの輸入規制、中国の感染症、物理的店舗およびデジタルを活用した流通での変化、Y世代とZ世代の消費パターン、中古市場のブーム、 そして持続可能な開発に向けた措置、といった数々の要因を今後数年間の戦略に統合していくことになります。ただし、これらの要因のいくつかは新しいものではなく、業界はすでにそれらに取り組んでおり、2020年をそうした要因を高度に統合させるべき年として認識しています。
製品
輸出総額のほぼ95%を占める腕時計が2019年をリードしました。2018年と比較して2.6%の増加。その輸出額は200億を超えて205億スイスフランに達しました。しかし、本数としては13.1%の減少となりました。長年にわたって続いてきた減少傾向は、2018年の夏に顕著になり、2019年には例外なく各月とも明らかな減少を見せました。スイスからは2千60万本の腕時計が海外に出荷されたことになり、これは前年より310万本少ない数字となっています。この歴史的に低いレベルは、2009年の危機の年のそれよりもさらに低く、1980年代初頭の低迷期に輸出された本数に匹敵します。
輸出額での増加は、もっぱら3,000スイスフラン(輸出価格)以上の価格帯の貴金属またはバイメタルの機械式時計によるものです。その他の価格帯の製品や、クォーツ時計、特にステンレス・スチール製品は2019年に明らかな減少となりました。
市場
アジア市場がスイス時計輸出全体に占める割合は、香港のマイナスの影響により、やや減少しました。とはいえ、アジア大陸は輸出全体の53%を占め、2019年もまた、スイス時計が獲得したスイスフランの半分以上がこの大陸から得たものとなりました。ヨーロッパ市場は30%、アメリカ市場は15%を占めました。
アジアへの時計の輸出は、2018年と比較して2.3%増加しました。ただし、主要なアジア市場のすべてがこの値に近い結果となったわけではありません。香港は、6月から続いている抗議行動により激しく落ち込み、-11.4%(第4四半期は-25.9%)で年を締めくくりました。対照的に、中国は成長を定期的に加速させ、最終的には+16.1%、日本も同様に+19.9%を記録しました。シンガポール(+14.6%)は、下半期が好調だったおかげで、高い成長を記録した3つの市場のひとつとなりました。韓国(+4.9%)はより緩やかな成長を見せました。中東市場では、アラブ首長国連邦(+2.4%)が増加を記録したものの、サウジアラビア(-6.4%)は減少となりました。
ヨーロッパ市場(+1.0%)は、主に英国に牽引され、他市場と比較して最も低い成長率となりました。ドイツ(+0.2%)とフランス(+0.2%)では停滞し、イタリア(-4.2%)、スペイン(-1.1%)、オランダ(-3.0%)ではやや後退しました。
アメリカ市場(+6.1%)は、今年最も活発な地域となりました。これは、アメリカ大陸への輸出の4分の3を占めた米国(+8.6%)が好調だったことによります。
January 28, 2020