スイス時計協会FH会長 ジャン・ダニエル・パッシュからのメッセージ

この状況が想像できた人はいたでしょうか?中国で何かが「起きている」と知ったのはほんの数ヶ月前の2019年の終わりですが、スイスが今日このような大波に直面していることを誰が想像できたでしょう。

2003年、バーゼルワールド(チューリッヒ会場)でアジアの出展者が出展禁止になったサーズ(SARS)を覚えているでしょうか。思い起こしても現在起きていることに匹敵するほどではなく、人生は小説よりも奇なりであるということを表しています。手に負えない「自然」の出来事に直面したときの、何という謙虚さの教訓でしょうか。

この人間的、社会的、そして経済的な悲劇に直面している今、私たちの思いは第一に犠牲者の家族へ、感染した方々へ、そして一人でいる方々や仕事が危機的状況にある方々に向けられています。

また当然のことながら、事業に大きな影響を与えている、あるいは存続自体が危機に瀕しているすべての時計製造企業と時計以外の製造業界の方々にも心を寄せています。

今年3月19日、スイス時計協会FHはその他のスイスの経済団連と共に、追加的な財源の配分と、経済活動を追求したいと望んでいる企業の可能性を維持するよう連邦議会に要請しました。ウイルスのパンデミックを抑えるため、人々の行動や経済活動を制限する連邦政府の要求に対し、経済界を代表してこのようなメッセージを送ることは重要でした。この完全な制限への撤回要請は、利己的な経済行為ではありません。実際このような状況下における経済活動は、継続可能な限り規定された安全衛生規則に従って行われる必要があります。今だけのためでなく、何よりもビジネスが正常な軌道に戻る未来のために、可能な限り経済基盤を維持できるかどうかが問われているのです。

スイス時計協会FH本部は在宅勤務体制を検討していた矢先に、強制的に移行せざるを得なくなりました(スイス政府は4月27日に規制を緩和し、5月初旬より徐々に在宅勤務からオフィスワークに移行しています)。私たちは、メンバー企業専用のイントラネットとエクストラネットのサイトを通じて、現在の状況や当局の措置、時計に関する様々なトピックについてメンバー企業の皆様に情報を提供し続けます。行動を制限されるような事態においても、スイス時計協会は継続してメンバー企業と親密な関係を維持してまいります。

皆様のご健康と一日も早いご回復をお祈りします。私は、私たちの企業がこの困難な時期を問題が深刻化することなく乗り越え、状況が改善し始めたときに再び完全に稼働できるようになることを心から願っています。スイスの時計業界は、人々が再び前向きな気持ちに戻り、自分自身を楽しみたいと願う時に、その声に応えるために存在していると思っております。

                                                                          敬具

ジャン-ダニエル パッシュ

March 26, 2020

( 本記事は東京センターにて一部再編集して掲載しております。英語/フランス語の原文はこちらをご参照ください。 )


May 01, 2020