2020年上半期スイス時計輸出状況

かつてない減少

世界経済と同様に、スイス時計産業はこの上半期、前例のない危機に見舞われ、その影響は長引くと見られています。上半期、市場は長期間停止し、ほとんどの動きが中断されました。

年明けは、まだ新型コロナウィルスの影響の出ない幸先の良いスタートを切った後、スイス時計の輸出は3月に急激に落ち込み、次いで4月と5月には完全にストップしました。落ち込みは非常に際立っていたとはいえ、6月のそれを見ると、最初のショックが過ぎたこと、また、待たれていた回復の兆しが、現在のところ中国だけによるものであるにせよ、少しずつ見えてきたことを示しています。スイス時計産業は、昨年の同時期の107億スイスフランには遠く及ばないとしても、この6か月間で、69億スイスフランに相当する輸出を記録しました。これは、2019年上半期と比較して35.7%の減少でした。第1四半期を見ると、実質的に中国での落ち込みのみが原因で、7.4%の減少となりました。新型コロナウィルスの世界的感染が最も深刻な影響を与えたのは第2四半期で、時計の輸出は61.8%の減少を記録しました。

上半期の終わりが一つのサイクルの終わりとなったわけではありませんが、それは前例のないショックと、通常へのゆっくりとした復帰の間の移行期間に対応しています。現時点での結果のその先はと言えば、時計市場に影響を与える主な要因の変化を見極めることで、状況の回復の様相を描くことができます。その観察からまず言えることは、状況が非常に不確実だということです。最終的にどの程度まで落ち込むかについては、まだ大まかな予測しか立てることができません。通常に戻るまでどのくらいの時間が必要かについても同様です。消費者の信頼感が回復の鍵となります。現在、回復の最初の兆しを見せている中国にすべての目が向けられていますが、依然として多くの要因がその動きを圧迫しています。香港は、新型コロナ危機に加え政治情勢からの影響を受け、実質的に市場が停止状態にあります。米国は依然としてパンデミックの影響を強く受けており、ヨーロッパでは外国人観光客の大幅な減少から、トラベルリテール分野の活動が大きく落ち込んでいます。関係者によると、国際観光はこの先3年は通常に戻ることがなく、時計を含む高級品の販売には長期に渡りブレーキがかかると見込まれています。また、中国での消費の回復は加速するとはいえ、それは数年間のスパンにおいてであり、その他の地域での減少をすぐに埋め合わせるものとはなりません。

全体的に見て、スイス時計産業が通常に戻る時期については、中期的または長期的な視点でとらえる必要があります。時計の輸出は、2020年には全体での約30%の市場縮小を反映したものとなる見込みで、ブランドによっては異なる結果も予想されます。

製品

1月から6月までで、腕時計の輸出が売上高の95%を占め、2019年上半期比で-35.3%となりました。今年前半のスイスの時計出荷数は550万本で、1000万本を超えた前年同期と比べて44.9%の減少を記録しています。

落ち込み現象はすべての価格帯に共通で、200~500スイスフラン(輸出価格)のカテゴリーで最も被害が大きく、半減しました。輸出総額の70%を占める3,000スイスフラン以上のカテゴリーは、-32.7%にとどまり、水準をやや上回りました。

市場

上半期の落ち込みは、需要の実質的な変動よりも物流の実際の中断あるいは大幅な減少を反映しています。したがって、地域別の輸出内訳から市場の動向に関するさらに詳しい情報を得ることはできません。アジア市場(-35.7%)、ヨーロッパ市場(-36.8%)、アメリカ市場(-32.9%)ともに、上半期の終わりにほぼ同等の減少が見られました。

1月から6月までで、すべての市場が大幅な減少を記録しました。但し、中国市場は14.6%の減少にとどまっており、輸出の落ち込みは、景気回復を見越してそれほど大きくなりませんでした。実際、6月には回復を見せ、月次成長率は47.7%となっています。輸出に関しては、現在のところ他の市場では実質的な回復の兆しは見られません。

July 21, 2020