2021年上半期スイス時計輸出状況

2019年の水準に戻る

上半期のスイス時計輸出は、主要市場において非常に対照的な情勢に直面したことから、特殊な状況となりました。2020年の困難な時期を通り超して、相変わらずパンデミックの影響を受けながらも、新たな正常化に向けてようやく回復を迎え、着実に勢いを増しました。これは特に、地理的状況はもちろん、高級品市場、流通、消費者の面で新たな均衡を見出したことによるものです。

2020年夏の時点で回復の兆しがあったのはもっぱら中国で、とりわけ好調なペースでした。ヨーロッパ市場が感染症の流行に伴う外国人観光客の激減やさまざまな制限措置の影響で相変わらず困難な状況にあった中で、アメリカ市場は予想外の好成績を見せ、2月の立ち直りに貢献しました。このような状況が第1四半期の大半を占めました。この時期はまた、スイス時計産業と、皮革製品やジュエリーなどの高級品市場の他の分野との競争が激化しました。一方で、パンデミックが始まって以来、一部の小売事業のデジタル化が進み、ブランドのオムニチャネル戦略の中で必然的にその比重が著しく高まりました。独自の価値観を含め、新しい世代の消費者の重みも増しており、これに応じた生産方法やコミュニケーション方法、販売方法の変化も見られました。

2021年上半期のスイス時計輸出総額は106億スイスフランにのぼりました。これは2019年と同等の水準(-0.5%)です。2020年前年比としない理由は、同年の記録的な低水準により妥当な比較結果が得られないためです。パンデミック以前の水準に復帰したことは喜ばしい結果であり、差異はあるものの、経済活動の正常化が世界的に進んでいることを示しています。但し、地理的な二極化は業界の二極化でもあり、すべてのブランドが輸出統計にみられるダイナミックな成長率の恩恵を受けているわけではありません。

見通しは徐々に明るくなっているとはいえ、不確実性の高い状況は依然として続きます。ビジネスの方向性は相変わらず今後の各市場の感染状況の変化とそれに伴う制限措置に左右されることになります。年初からの傾向を見ると、パンデミック発生以前の年水準に戻るのは2022年初頭になる見込みです。これは当初の予想よりも早く、2020年の大幅な減少の埋合せに1年あまりを要することになると考えられます。

製品

腕時計の輸出は、時計輸出全体の95%を占める101億スイスフランにのぼり、 2019年上半期と比較して+0.8%を記録しました。但し輸出本数は相変わらず減少が続いており、 1月~6月の半年間の出荷数は2019年同期と比べて310万本少ない700万(-30.4%)でした。

こうした減少はすべての素材グループに共通で、主にスチールウォッチ(-27.1%)とその他の素材カテゴリー(-50.1%)に由来するものでした。一方、輸出額は、貴金属腕時計の成長(+3.6%)に支えられる結果となりました。

輸出額のわずかな上昇は、3,000スイスフラン(輸出価格)以上の時計が増加(+7.4%)したためで、その他の価格帯は大幅な減少を記録しました。この価格帯の製品は本数においても増加(+5.6%)を見せましたが、45,000本をわずかに上回る程度で全体に占める割合が少ないことから大きな影響はありませんでした。全体的には、500スイスフラン以下の価格帯の著しい減少(-38.1%)の影響を受けました。

市場

アジア市場は、スイス時計輸出の半分以上(54%)を占め、2019年上半期の水準を1.5%上回る結果となりました。ヨーロッパ市場は著しい減少(-8.8%)を見せ、世界輸出の4分の1あまり(27%)を占めるにとどまりました。アメリカ市場のシェア率は17%にのぼり、半年を通して著しい増加(+17.4%)を記録しました。

主な市場のうち、中国とアメリカがそれぞれ+61.9%と+22.4%の高成長を示しました。一方、香港(-24.0%)、日本(-12.4%)、韓国(-22.1%)、および欧州の主な輸出先(-8.8%)の大幅な落ち込みにより相殺されました(オランダは例外で6.9%増)。シンガポール(+4.8%)、アラブ首長国連邦(-3.4%)、台湾(+3.2%)、サウジアラビア(-5.4%)など、その他の重要なアジア市場では、変動は増加・減少ともに緩やかでした。

July 20, 2021