堅調な成長、記録的な水準、好ましい見通し
2022年は、スイス時計産業にとって素晴らしい1年となりました。2021年にパンデミック発生以前の水準に戻った後、業界は堅調な成長を続け、主要3市場のうち2市場が大きく落ち込んだものの、過去最高を記録するまでとなりました。
スイス時計輸出額は、2022年に248億スイスフランに達し、2021年度の実績を11.4%上回りました。時計は、高級品に対する旺盛な需要と世界的な富の増加により、全体が恩恵を享受しました。また、エントリーモデルのスイス時計も非常に好調であったため、年間でプラスの成長率となりました。
新型コロナウイルス感染症による状況が、特に中国に直接的な影響をもたらしたものの、不調な経済状況はビジネスにほとんど影響を与えませんでした。また、ロシアの地政学的状況についても同様で、年間の業績への影響は1%程度と限定的でした。
生産面では、時計メーカー各社が、原材料の不足やコストの上昇、納期の延長などへの対応に迫られました。人手不足が足枷となることもありました。こうした状況の中、業界は、投資や技術革新を継続し、多くの雇用を創出しました。スイス時計ブランドは、さまざまな消費パターンを持つ5世代の顧客層を満足させようと常に努力を重ねてきました。こうした文脈の中、デジタル化に関するプロジェクトを継続的に推し進め、特にWeb3.0の可能性にも取り組んできました。
不透明な状況が続く中、スイス時計産業の見通しは依然として良好です。堅調なファンダメンタルズと継続する需要が、2023年の成長を牽引していくものと予想されます。比較ベースが高いことに加え、リスクレベルを考慮すると、成長率は2022年よりも低くなる見通しですが、それでもある程度高い成長が見込まれます。
製品
時計輸出の95%以上を占める腕時計の輸出額は237億スイスフランに達し、2021年比11.6%増という結果となりました。出荷数としては1,580万本を記録し、前年に比べ5万本(+0.3%)増加しました。数量ベースでは、その他の素材(+32.3%)が大幅に増加した一方、スチール(-7.8%)やその他の金属(-18.4%)のカテゴリーは減少しました。
クオーツ時計は38万5千本(2021年比+4.1%)の増加となりました。一方、機械式時計は33万5千本(-5.3%)の減少となりましたが、金額ベースでは11.5%の増加となりました。
主な価格帯がすべて増加を記録したものの、200〜500スイスフラン(輸出価格)のカテゴリーは例外となりました。24.0%の減少となったこの価格帯は、輸出による売上高に占める割合は3%未満であり、輸出総額の成長を1ポイント引き下げただけでした。しかし、数量ベースでも22.2%(62万5千本)の減少となっており、長年続くこの傾向は懸念されるところです。一方、200スイスフラン以下のカテゴリーは5.9%の増加を記録しました。500~3,000スイスフランの価格帯も同様の傾向にあり(+4.8%)、3,000スイスフラン以上の時計は15.6%増加しました。
市場
アメリカ大陸は最も高い成長率(+23.9%)を記録し、2022年の輸出の19%を占めました。アジア(+4.4%)は、2つの主要市場の落ち込みによって成長が抑えられました。5年間、世界で50%を超える割合を占めていたものの、半分を下回る結果(49%)となりました。欧州(+15.8%)は、平均に近い伸びを示し、世界での割合を30%に伸ばしました。
米国(+26.3%)は、2年連続で非常に高い成長率を記録し、特に高い水準に達しました。
アジア地域では、中国(-13.6%)と香港(-10.5%)が減少した一方、日本(+19.5%)、シンガポール(+26.4%)、アラブ首長国連邦(+12.7%)、台湾(+15.0%)など他の市場が堅調な伸びを見せました。韓国(+1.9%)は、中国人観光客の不在により、より緩やかな増加となりました。中国での後退の理由は、新型コロナウイルス対策、特に第2四半期における上海の都市封鎖によるところが大きいと思われます。8年間で半分以下(-53.7%)に縮小した香港に関しては、パンデミックの影響に加え、長く続いている市場の再調整によるものです。
欧州においては、すべての主要市場が成長を記録しました。各地の旺盛な需要に加え、特に米国や中東からの観光客が戻ったことが要因となっています。
January 24, 2023