主に中国市場と香港市場の落ち込みによる減少
高級品市場と同じく、スイス時計産業も2024年前半は地域に応じて成長率の増加と減少の両方が認められました。具体的には、不動産不況、若者失業率の悪化、景気の低迷などから経済への信頼感が揺らぐ中国が、著しい減少(-21.6%)を見せ、香港(-19.9%)もそれに続きました。その他の市場は若干プラスの成長率(+1.0%)を記録し、今年この業界で当初予想されていた高水準の安定化が確実となりました。
今年度上半期のスイス時計輸出額は129億スイスフランで、2023年1月~6月比で3.3%減少しました。パンデミックの収束以降3年間続いた堅調な伸びは、こうして止まりました。世界的な需要の鈍化は予想されていたことであるとはいえ、中国市場の特殊な状況は、中期的な見通しに大きな不確実性を投げかけています。
不安定で時に複雑な状況の中で、消費者は裁量的支出を控える、あるいは先送りにする傾向があります。そのうえ、スイス時計産業は、皮革製品やジュエリーなどの高級品市場の他の分野との競争にさらされています。但し、一定価格を超える高級スイス時計については、人気は衰えることなく、中国を含めて輸出額は順調に伸びています。
世界経済が底堅さを見せているとはいえ、スイス時計産業は、中国市場の不況に加え、スイスフラン高、さらには世界の政治的緊張の高まりによる影響に直面している状況です。スイスでは、下請け業者が需要鈍化により大きな打撃を受けており、今後への懸念を表明しています。受注の延期やキャンセルが相次ぎ、見通しが立たないため、今年の下半期は厳しい状況が見込まれ、2025年に向けて大きな不安が伴います。
スイス時計輸出に影響を与えるこうした両極的な状況は年末まで続き、ブランド、市場、価格帯における著しい格差も維持され、最終的な輸出額は2023年比で大幅に減少することが予想されます。
製品
上半期のスイス時計輸出総額は123億スイスフランで、前年を3.2%下回りました。輸出本数は2023年1~6月期を81万本下回る770万本(-9.9%)でした。金額ベースでは、スチールウォッチ(-10.8%)が大幅な落ち込みを見せ、貴金属腕時計は増加を記録しました(+2.0%)。
輸出総額の減少はもっぱら、500~3,000スイスフラン(輸出価格)のカテゴリーによるものです。このカテゴリーが輸出売上高に占める割合は15%に過ぎないものの、輸出総額を19.0%減少させる結果となりました。500スイスフラン未満のカテゴリーは7.0%の減少を見せましたが、3,000スイスフラン以上のカテゴリーは0.7%増で、前年よりわずかに好調でした。
市場
アジア市場(-7.0%)は全体の落ち込みに大きく貢献しましたが、ヨーロッパ市場は平均1.1%の減少にとどまりました。アメリカ市場は米国に牽引され、3.8%増の成長率を記録しました。
米国(+3.6%)は、比較ベースが非常に高いにもかかわらず、大幅な成長により、スイス時計最大輸出先市場の地位を固めました。
最も落ち込みが激しかったのは、中国(-21.6%)と香港(-19.9%)でしたが、その他のアジア主要輸出先市場は明らかな増加傾向(日本 +7.7%、韓国 +12.1%、台湾 +7.3%)、もしくは安定傾向(シンガポール +0.5%、アラブ首長国連邦 +0.7%)を示しました。
ヨーロッパ市場では、イギリス(-1.4%)が若干の減少傾向を見せました。フランスは、恐らく夏季オリンピックの好影響を受けて、増加(+3.8%)を記録しました。対照的に、ドイツ(-5.1%)、イタリア(-6.1%)、スペイン(-3.5%)は大幅に後退する結果となりました。
July 18, 2024